VPoE とは何か、または EM のキャリアパス
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この記事は、株式会社エス・エム・エス Advent Calendar 2025の12/12を開く記事です。
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採用活動をしていると、「VPoE (Vice president of engineering) になりたい」というキャリアを聞くことがある。一般的に、エンジニアリング・マネージャー (以下、EM) の上位互換として認識されているようで、雑に括ると「経営に近い EM」としてのイメージがあり、「なんか裁量大きそう」「待遇良さそう」という印象があるのだろう。
ChatGPT 曰く、VPoE は「組織全体」「技術戦略」「経営との接続」あたりがキーワードらしい。およそ世間のイメージもそんなところだろう。ではこれで実際の VPoE の活動がわかるかというと、なんとなくわかった気になっているだけで実際のところは曖昧なままだ。
EM の仕事すらまだ明確な定義がない中で、さらに雲をつかむような話だが、この記事では VPoE の仕事をもう少し掘り下げて解説し、EM のキャリアパスが見えるようにしたい。
ここからは、VPoE というまだ見えない仕事については解説せず、EM の仕事を解説していく中で VPoE の仕事と呼ばれているものの姿を解き明かしたい。
環境を整えるのが EM の仕事? よくマネージャーの仕事は「アウトプットを最大化すること」「成果を最大化すること」だと言われる。マネージャーの一種である EM の仕事も同じ仕事の定義に乗っかってもよさそうだ。では、成果を最大化するためにやる仕事というのはどのような活動だろうか?
開発チームのパフォーマンスを上げるためにやることを考えてみよう。たとえば、以下のようなものが挙がるだろう。
開発プロセスの詰まりを解消する 情報流通の整備をする 調整をする 個々の問題解消のファシリテーションをする 技術基盤を整える 1on1 どれも悪くないように思える。実際に EM がやっている仕事だし、誰かがやる必要のある大切な仕事だ。では、これらを全部やるのが良い EM と言えるだろうか?
問題は、これが組織の成果を最大化する活動なのかである。
課題の解決が EM の仕事 課題の解決をいろいろやるのが EM の仕事なのは間違いがない。「いろいろやる」の解決の仕方も、対症療法的に目の前の問題を解決することもあれば、仕組みづくりをしていくことで解決をしていくこともある。
では、課題とはなにか? 課題は、TODOリストではない。計画ではない。現象ではない。課題は、組織の成果を生み出す上での機会や、問題となっている阻害要因のことだ。
EM をやっていると、「あんなことがあった」「こんなことがあった」「あれをしてほしい」「これをしてほしい」とあらゆる問題が人づてにやってくる。
これらへすべて対処をしていると、あっという間に自分の時間が埋まっていく。そのため、一般的に EM はそうして集まった現象のそれぞれに対して、問題構造の分析をして、組織が解くべき課題を抽出するという過程を踏む。このときの判断基準が、「組織の成果に大きく貢献する問題はなにか?」だ。
こうして抽出された課題を解くのが EM の仕事になる。
課題のイシュー度を考える 次に考えるべきは、課題のイシュー度だ。イシュー度という言葉は、「イシューからはじめよ」で解説された言葉で、「自分のおかれた局面でこの問題に答えを出す必要性の高さ」を指す。その問題を解くと価値が高いということだ。イメージがしやすければ、最初は緊急度と重要度で分類して重要度の高い問題をイメージしてもいい。
抽出された課題に対してすべてを解いていくことは難しいため、優先順序を付けることになる。このときに判断基準となるのがイシュー度だ。
優れた EM が組織の成果に対してより大きなインパクトを残せる人だとすると、それはイシュー度の高い課題を見出し、質の高い解決をすることができる人だと言える。